知能の心理学

知能とは

知性、知力。その人が数字や図形をいじったり、言葉や文字を使ったり、いろいろな問題
を解決するためのもとになる知的な力です。
ただし、今日勉強して歴史の年号や数学の公式を覚えても、それで知能が高くなるわけで
はありません。
知能と知識や学力は同じではありません。
知能は、そういう勉強をしたり、作業をするときの土台となる知的な能力です。

知能テストと知能指数 IQ

小中高校で、知能テストを受けたことがありますか?知能テストを受けると知能指数とい
うのがでて、それで、頭が良いとか悪いとかって考えますよね。
身長計で身長をはかって、高いとか低いとか考えるように。
でも、本当は、知能テストと身長計はずいぶん違います。
まず、実をいうと知能とはなんなのかよくわかっていません。
身長がなんなのかよくわからないということはありません。
身長の測り方で議論になることはありません。
でも、知能については、色々な意見があり、色々な測り方があります。
たくさんの知能テストがあり、それぞれの方法で知能を測っています。
どのテストが一番正しいのかはもちろんわかりません。
また、何かを測るときに「誤差」はつきものです。
身長を測るときに、そっと背伸びをしたり、ちょっとひざをかがめれば、本当の身長は測
れません。
でも、身長判定のときに、そんなことをしても、きちんと見ていればすぐにわかります。
けれども、知能テストで測定するときにはわからないことも少なくありません。
朝、母親と喧嘩した、ふてくされてやる気がない緊張しすぎている、そんな状態でテスト
を受けても良い点数は出ません。
また、もし事前に似たような問題を手に入れて練習してしまうと実際の知能以上にいい点
数がとれることもあります。
(知能テストを作るときには、練習しても点数があがらないような工夫をするのですが、
それでも一生懸命練習されてしまうと、やはり点数は上がってしまうようです)
さて、それでは、理想的状態で測定した場合はどうでしょう。
身長をきちんと測定すれば5センチも誤差がでることはないでしょう。
でも5ミリくらいの誤差だったら髪型等によってあるかもしれません。
私たちは、身長についても身長計についてもよく知っているので、そういうことは常識的
にわかります。
ところが、知能指数の話になると、その常識が働かなくなってしまいます。
隣の子の知能指数が103、自分の子の知能指数は98「ああ、自分の子は頭が悪い」と
思ってしまいます。
でも、もしかしたら知能テストを受けるときに、体調が悪かったのかもしれません。
でも、もしかしたら知能テストを受けるときに、体調が悪かったのかもしれません。
気分が乗らなかったのかもしれません。
そんなことはなくて、完全に理想的な状態で知能テストを受けたとしましょう。
体調漫然、やる気は満々、適度な緊張とリラックスで100%力が出し切れたとしましょ
う。
仮にそうだとしても誤差はあります。
理想的状態でも知能指数でプラスマイナス5くらいの誤差はあるといわれています。
知能テストは、身長計ほど正確な測定道具ではないのです。
だから、わずかな知能指数の差を気にしすぎてはいけません。
知能指数が103の子も98の子も、どちらも「平均的な知能:と考えるのが正しい考え
方です。
ある心理学の先生が、新しい知能テストを作るときに、上のような考え方に従って、細か
い知能指数が出ない知能テストを作りました。
知能のレベルを中の上とが上の下といった具合に表すテストです。
ところが、出版してしばらくしてから、出版社から連絡があったそうです。
「先生、今度の知能テストは売れません。やっぱり知能指数が細かく出るテストにして下
さい」
知能テストの誤差を考えると、そんなに細かく知能指数を出してもあまり意味のないこと
も多いのですが、でも細かい数字が出る法が正確な知能テストのような気がしてしまうよ
うです。
(知能テストや知能指数があてにならないというのではありません。ただ、何を測るにし
ても、必ず誤差はつきものだということです。)

知能テストとスピードと老化(高齢者の知能)

私たちがよく体験する知能テストは、制限時間があり、スピードを競うものです。
たとえば、1分間にいくつ問題がとけるかが問われます。
このような知能テストは、だいたい中学生か高校生ぐらいのときは一番点数が高くなりま
す。
高齢になるにしたがって、どんどん点数は下がります。
それでは20歳のひとより50歳の人の方が頭が悪いのでしょうか。
会社の社長や、野球の監督は50歳のベテランより20歳の若者にやらせた方がよいので
しょうか。
もちろん、そんなことはありません。
たしかに、スピードを競ったり、単純な暗記力などは、高齢になると衰えます。
しかし、時間をかけて、高度な思考力を使うような知恵ともいえるような知能(結晶性知
能)は、年齢があがっても、下がるどころか、どんどん向上していくのです。
高齢になっても、現役の政治家や、経営者や芸術家などは、やはりすぐれた知的能力を発
揮しています。
ただし、脳の病気等になってしまって、知能が下がることはります。
でも、それは高齢者に限ったことではありません。
それでも、高齢になって頭が悪くなったように感じられる人はいるでしょう。
しかし、それは、高齢になって知能がさがったのではなく、たいていの場合、やる気がな
くなったり、環境が悪くなったせいです。
たとえ若い人であっても、チャレンジ精神を失い、新しいことへのやる気が下がり、新聞
も読まないで、変化のない短調な環境に10年もいたら、それは、ボーとした人間になっ
てしまうでしょう。
たとえ、高齢になっても、脳の病気にならず、やる気を失わず、変化のある豊かな環境に
いれば、たとえスピードは落ちても、知能全体が下がることはありません。

知能指数の高さは頭の良さ?(知能の構造)

1.わたしたちの生活全般にわたる「知能」があるという意見もあります。そうすると、
知能指数の高い人は、頭の良い人といえるかもしれません。
2.しかし、全般的な知能はあっても、そのうえに、計算をする知能とか、言葉を使う知
能とか、色々な分野ごとの知能があるという意見もあります。
そうすると、全般的な知能指数の高さだけでは、その人の知的な能力はわからないし、
ある人は計算が得意、ある人は文章を書くのが得意、といったように人によって得意
不得意の分野があるという人もいます。
3.さらに、もっと知能は細かく分かれているという人もいます。全般的な知能などは存
在していない、さまざまな問題や作業に関する知能があるという考え方です。
この考え方では、全般的な知能指数の高さだけでは、その人の頭の良さはまったくわ
からないことになります。
知能指数の高い人とは、単に、知能テストのようなパズルやゲームに強い人とも言え
ます。
上の3つの考え方のどれが正しいのかはわかりません。
ところで、ベテランのウエイターは誰が何を注文したかをきちんと覚えています。
将棋のプロは、将棋の駒がどういうふうに動いていたかを実に良く覚えています。
このように、様々な職業や趣味の分野で、すばらしい記憶力や有能さを表す人たちはたく
さんいます。
それでは、このような有能な人の知能指数は、みんな高いかというと、必ずしもそうとは
限りません。
ある職業で、抜群の能力を示す人でも、全般的な知能指数を測ると平均的ということがあ
ります。
ある分野ですばらしい記憶力を示す人の、一般的な記憶力を測定すると、平均的であるこ
とも珍しくありません。
もしかしたら、全般的能力は平均的でも、その職業や作業に関する知能がとても高いのか
もしれません。
もしかしたら、「その職業に関する知能」などは存在していなくても、その仕事や趣味が大
好きで、熱心にやっていくなかで、能力が十分に発揮されているのかもしれません。
アインシュタインは、様々な面の知能が高い人だと思いますが、それでは、彼がどんな職
業についても有能な職業人になれたかというと、そうはいかなかったでしょう。
・知能を活かすために(EQ)
ある知的障碍児たちと一日すごしたときです。
その中で、一番きちんとあいさつができ、にこやかに周りの人たちと上手くできる女の子
がいました。
ところが、あとになって、その子の知能指数が一番低いことを知りました。
その子は、計算や字形や言葉などに関する知能は確かに低かったのです。
でも、その子には、高い「社会性」がありました。
知能が多少低くても、社会性が高ければ社会の中で生きていけることはあるでしょうし、
逆に知能が高くて学校でどんなに優秀でも、周りの人たちと上手くやっていく社会性がな
ければ、せっかくの高い知能を活かすことができません。
最近「EQ」というのが、ちょっとしたブームです。
今までの知能指数ではなく、自分の気持ちに素直になったり、我慢したり、人の気持ちに
共感できたり、協調できたりする能力のことです。
「心の知性」「情動指数」などとも呼ばれます。
この EQ の研究者によると、今までの知能指数よりも EQ の高さの方が社会で成功するた
めには必要だと言っています。
また以前から、言葉や計算に関する知能だけではなく、「社会的知能」が大切だという意見
もありました。
EQ や社会的知能を含め、その人の性格や、情緒的な面によって、知能が生かされることも
生かされないこともあるでしょう。

まとめ

人によって肉体的能力に差があるように、知的な能力(知能)にも差はあると思います。
けれども、一回か二回の知能テストの結果だけで、全てを判断してしまうのは間違いです。。
測定には誤差があります。
また、まったく違う種類の知能テストをしたら、違う結果がでるかもしれません。
仮に知能指数は特別高くなくても、ある仕事や趣味の世界で素晴らしい能力を示せるかも
しれません。
私たちの日常生活は、知能だけで決まることはありません。
その人の性格や態度なども含めた、その人全体の力が大切なのです。

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